常山の蛇勢
じょうざんのだせい・・・・・
先陣と後陣が相呼応して行動をとること。組織のトップから末端までが連動して動き、隙のないことをいいます。
孫子の兵法の多くは、そのまま企業経営に利用することができるものが多いのです。この諺は「組織は有機的で一体となっていることが肝要である」と教えています。
「孫子」「晋書」などに見える寓話に次のようなものがあります。
むかし、中国の有名な五岳の北方に常山という山があり、そこに「率然」という蛇がいました。この蛇は「もし、その首の方が打撃を受けると、すぐに尾の方が反撃してくるし、その蛇の中央部を撃つと、首も尾も同時に協力して攻めてくる。つまり、全身がうまく連携して敵に対抗する」と説明されています。
「孫子」の「九変」及び「九地」の両編では、多様で複雑な環境の違いによって、「臨機応変」の行動をとらなければならない旨を説いています。
そして、どのような場合であってもみずから率いる部隊が、いかにしてうまく生き延びていくことができるか、また窮地に陥らないようにするかに焦点をあてています。
「常山の蛇勢」の訓えは、なかなか含蓄のある「組織論」と見てよいでしょう。
わが国の企業の組織は、タテ割のピラミッド型組織といわれています。
このような組織で、上下間の情報がうまく疎通しないで硬直化すると、上層部になにか問題が起こっても、下部組織は、それに対して反応を示すことができません。
また、末端でつかんだ情報は、各段階の確認が得られないと上層部の耳に入らないことになります。
つまり、身体でいえば指先の神経に感じた痛みを頭が感ずることができなくなってしまうのです。
経済環境が激変したり、同業他社の動きに異様な事態が起こった際に全組織として有機的な反応ができないようでは、新しい時代に対応することはできないでしょう。
最近、組織について述べたホロン理論という考えが、わが国に伝えられました。ホロン“holon”はもともと哲学の用語で、得体のしれない輪郭のはっきりないものという意味です。つまり、より大きな全体を構成する一部分が自律的に動くことです。
責任者や「長」という名の人が指示しなくても、全体が有機的に反応するという点で「常山の蛇」と似ていると思います。
「危機管理体制」について、いろいろ論議されていますが、従来のようなタテ割の組織構造では緊急事態に対応できないかも知れません。組織のトップと末端がうまく連動する体制を考える必要があります。
わが国の企業風土からして、直ちに導入するのは難しいようですが、組織を活性化し、外部に敏感に反応できるような方策を取らなければならないことは自明の理であります。
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