泣いて馬謖を切る

規則や、法を守ることは大切であるから、どんなに心情的に忍びないことであっても、あえてそれを曲げてはいけないという教えです。

「十八史略」に出てくる有名な逸話から生まれたことわざです。 諸葛孔明の腹心であり、功績も多かった武将の一人である馬謖は街亭の合戦で孔明の軍法に反して敗戦を喫してしまいました。戦場での命令違反は、処刑されるということに決まっていました。孔明は情においては、馬護を斬るには忍びませんでしたが、軍法に反することはできず「涕を流してこれを斬りその後を哀れむ」という処置をとったのでした。

 正史の「三国志」には、「を戮して、以て、衆に謝す」とあります。孔明は、馬を処刑したあとで、その家族をなぐさめ、また自分を降格して、全軍に詫びたのでした。
 法を守るのに厳しい態度で臨まなければならないという教訓のもう一つの例としては、春秋戦国といわれた中国の長い戦乱の時代に秦の国力増強に大きく貢献した商という当時の法務大臣の話があります。秦の太子が法にふれる行為があったとき、その教育係を厳しく罰し、天下に知らしめたとあります。

 国法や、おおやけの取り決めを守ることは社会秩序維持のため当然の義務です。また、自分の所属している組織内のルールを大切にすることは当然であり、管理者は規則違反した者に対して、次のような態度をとるべきであると、この訓言は教えています。

@違反者に対して公平に罰すること
Aみずからについても、罪を犯したとして、相当の処分をする
 まず、第1点としては、私情を交えないことでしょう。自分がかねがね目をつけていた可愛い部下を罰することは私情において忍びないところです。しかし、もし甘い処置で、その場を糊塗すれば、えこひいきといわれて、全組織の管理に支障をきたします。また、上席幹部の親族や、縁故者に対して規制の適用を除外することも、ルールを厳正に実施できなくする前例になりかねません。

 先に述べた商の例は現在のサラリーマンの社会でいえば、社長の息子や親戚の人を罰するということに匹敵します。その衝にある担当者は、身を挺して自社の規則を守る位の覚悟が必要です。権威に負けて適用を曲げるようなことをすれば、その会社の規律は保てなくなります。
 第2点は、管理者側の処罰です。単に部下に厳正な法の遵守を求めるだけでなく「不止を冒すような部下に教育した罪」に対してみずからを罰する心構えが必要です。
  

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