立ち寄らば大木の陰

たちよらばおおきのかげ・・・・・
大きな樹の下を選んだ方が安心して休むことができるように、人生を託す際に、庇護を求めるのであれば、力のある組織体に頼ることで安心を得ることができるという教えです。

  類似の格言としては、「大木の下で笠を脱げ」「寄らば大樹の陰の陰」というのがあります。出典としては、「世話尽」の毛吹草の中に見えます。また、英語の諺のなかには、一ItisgoodshelteringunderanOldhedge.”とあり、この方は「雨やどりは、古い軒の下がよい」という意味です。これは、「職を選ぶなら、老舗がよい」というニュアンスと受け取ってよいでしょう。
つまり、確実性、安定性を重視して、危険な道を選ばないことをすめた言葉です。

ここで注目しておきたいのは「陰」という言葉でしょう。この言葉が、われわれ日本人にとって、日常生活の中で根強く生きていることに注目しましょう。「お陰さまで、当社は、今期も配当を維持することができました」などと株主総会で社長さんが報告するのを聞きます。また、息子の試験合格の際に、お母さんが「うちの子も、お陰さまで、合格しました」などというように、日常生活の挨拶の中で生きています。

日本人の心のなかには、自分の力ではなく他人の力、あるいは神仏の力に守られて生きているという考えがあり、このことが人間関係をスムーズにしています。
先の例をとってみますと、「お陰さまで、良い決算ができた」という報告は、「社長の力や社員のがんばりによって好い結果がでた」という代わりに、第三の力の加護によって可能になったと述べているのです。
また、母親も自分の息子が試験に合格したのは、自分の厚いケアや、息子の猛勉強によって成功を得たのではなく、自然の力、運の良さ、そしてさらには家族を守ってくれている、もろもろの世間の力が、彼を合格させたのだと述べているのです。

外国系企業の友人と話していたとき、「日本人は、自分たちが成功したといわないで、成功させていただいたというように受身形を使う」と不思議がっていることがありました。
敬語のなかにも、「成功されました」「合格されました」などの受身形が転化したものも見られます。

つまり、「寄らば大樹の陰」という格言は、日本人の心情のなかに深く根ざしたものであることが分かります。
しかし、大きな傘の下なら安心とばかりに、自分の意志を曲げてまで固執する必要はありません。
未来の社会を展望したとき、ベンチャー・ビジネスがもっとも有望な将来性を持っていることは、明らかであり、いたずらに大企業のもとに集まるということは、感心できません。

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