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―人間の賞味期限の中に「定の終焉」という話をされてらっしゃいますけど、時代は大きな変革期になっていますか?

僕は本当にそう思います。例えば西武の堤さんとかダイエーの中内さんとか、ある時期非常に命経営者とカリスマのような評価をされた人たちが、ここにきて急速にそのポジションを失っていますよね。ということはやっぱり彼らが、賞味期限切れになってから気づかずに、まだそのマインドを持ち続けた結果だと思うんですよね。彼らがもっとこう、世の中にたいしてセンシティブであれば、謙虚であればやっぱり人にポジションを渡したと思うんですけれども、

そこらへんがやっぱりわかんなくなるんでしょうね、ついつい、偉くなっちゃうと。

―見えなくなってしまうと。
そう。だから偉くなるとやばいですよ、今の時代。本当に謙虚に真摯に生きていないと。

―確かに会社の中で全部同質のものだと逆に良くないですよね。
高塚さんなんかもそうだと思うんですよ。やっぱりどっかで謙虚さっていうのを失っていたような気がするんですよね。エントロピーの法則というのがあるじゃないですか。物事は完成すると壊れていくというのが世の常で、どっかで完成してしまわない、立派になってしまわないというマインドを持っておかないと怖いですね。


―そういう意味で吉本でされた「新喜劇やめよッカナキャンペーン」とかっていうのも同じですか?

そうですそうです。やばい状況を作っておかないと、危機感を持っておかないとダメですね。20世紀っていうのはプラスでモノを考えていくっていうか、モノを増やしていくということでしたから、これからはマイナスで考えていくというね、進化論じゃなく退化論(笑)。というのを考えなきゃいけない分水嶺がこの21世紀だと思いますね。何を減らして成長していくか。引き算型の成長論というかね。そういう理屈を立てていかないと。人間のキャパシティって限られているわけですから。永遠にモノって入らないじゃないですか。だからなんか捨てないとダメ。


―企業も今、コストダウン、コストダウンということでやってますね。
それと同じようなことですか?

ただね、削っていくっていうのはあまり前向きじゃなくてね。それだけじゃなくて削って何を入れていくかということだと思うんですね。だからリストラっていうのはちょっと違うと思うんですね。成長率っていうのはもうそんなに右肩上がりで増えていくことはないと思うんですよ。経団連の予測でいくと、2025年までの平均成長率が2%というのがありますけどね。これだって団塊の世代800万人が辞めてしまったら、3%落ちるなんて予測も他方ではあるわけですから。もうそんなに右肩上がりではいかない。

成長率は伸びないんだけど、中身の充実ということに切り替えなきゃいけない。大人としての、大人の発達心理学。今まではやっぱり若者の発達心理学できたんですけど、もう国民の平均年齢が40歳を超えるわけですから、大人としての新しい発達心理学っていうのを初めて身に付けなければいけない時代になってきたんじゃないかと思うんですよね。スローライフなんていうのは絶対そうですもん。そういう発想がでてきた。スローライフとかスローフード、有機農業とかね、そういう発想が出てきたのも確実に時代の転換点を表していることかと思うんですよね。


―バブルの頃はそういうことはまったく予測はつかなかったですよね。
だからなんていうか、黄昏ていくんですけど、美しく黄昏ていくというね(笑)。


―企業のマネジャーとしてどういうことが一番求められていますか?
できるだけ次の世代にチャンスを渡していくことだと思います。僕も45歳くらいで前の会社で取締役になったんですけどね。それまで部長でしょ。制作部長から取締制作部長に変わったんですけれども、仕事としては全然かわらなかったんです。それで変えなきゃいかんと思って、あえて会社にいないようにしたんですけどね。どっかでやっぱり、小さな会社といえども、取締役に入るということは経営に入るということじゃないですか。マインドを変えなきゃいけないと思ったんですね。
ところが毎日の日常の仕事をみていると気になってしょうがないでしょ?あそこをああしろ、ここをこうしろと。そうすると、それに合ったことしかやらない。これはよくないなあと思って。じゃあ見ない。目の前のこと。おれはいない、外に遊びに行ってるっていうとね、まあ2、3週間ですね、いてくれないと困りますとか言うのは。それが過ぎれば回っていきますよ、企業っていうのは。その手放してしまう勇気。思い切りみたいなものがすごく大事で、一瞬寂しいんですよ。たとえば自分とこて作ってる番組で名前が出ないとかね。そういうどうでもいいことなんですけども、それが捨てられない人がいっぱいいるんですよね。
でも捨てちゃうとなんかしないといけないから、必死でがんばりますよね。で、2年くらいたって振り返ると、やっぱもう一段違う大きな目線でモノを見られるようになってるんですね。手放すということはすごく思い切りがいることなんだけど、それをやらないとダメですね。捨てるとか壊すということ先。そしたら次が見えてくる。僕はほんと会社を辞めてよかったと思うんですよ。会社を捨てたから見えるってことがいっぱいありますね。