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結婚を 真剣に考えている貴方に贈る
雨村 幸親
  第3回 運命的な出会いを見つけるレッスン その1

「運命的な出会い」という言葉があります。
なぜだか分からないけれど出会った瞬間に「ビビッ」ときて「この人が探し求めていた人だ」と分かる。それほど話したことがないのにまるでずっと昔から知り合いだったかのようにあっという間にうち解けてしまう。そんな幸せな出会いを体験したという人は意外に多いものです。
また逆にどんな人と出会ってもいまいちぴんとこない。条件としては申し分ないはずなのに、なぜか今ひとつ盛り上がることができなくて、交際を進めていく間にだんだんイヤになってしまい結局別れる、ということを繰り返す人もいます。なぜこのような事が起こるのでしょう? 実は多くの人がこの「ビビッ」とくるには訓練が必要だと言うことに気がついていないのです。
そう、「運命的な出会い」を見つけるには練習が必要なのです。

よく「迷ったときには最初のチョイスがだいたい正しい」などと言います。たとえば部屋を借りる時に、いろいろなところを比較してみたけれど、結局最初に「これかな?」と"感じた"場所が、諸条件を考え合わせてみるとぴったりだった、というケースです。
これを「KJ法」という情報整理術で有名な川喜田二郎先生は、その著書の中で「ヒラメキ(直感)は論理の先兵である」と説明しています。つまり、私たちは口ではうまく説明できないけれど総合的に正しい答えを「直感」で導き出すことができます。ただその時点ではなぜそれが「正しい」のか、説明はできません。
しかし、論理を突き詰めて良く考えてみると、やがて言葉でそれを説明できる。つまり、論理よりもずっと早く直感は答えを知ることができる、という事なのです。
なぜこういうことが起こるか、というのは認知心理学などでいろいろややこしい説明がありますが、今回それはおいておき、直感をうまく活用する方法についてご説明していきましょう。
もちろん、だれにでも"直感"はあります。しかしそれを恋愛や結婚に積極的に活用していると言う人はむしろ少ないことでしょう。
そもそも、だれもがうまく利用できるなら、前述の「いまいちピンとこない」というようなことは起こらないはずですし、ぱっと見ただけで自分の求めている人が分かるはずです。
しかし実際にはその直感をうまく活用するどころか、その声を意図的に無視したり、ないがしろにしたりして、自分が悲しくなる結果を進んで呼び込んでいる場合すらあります。
また仕事や普段の生活では直感が十分に働いているけれど、こと恋愛に関してはうまくいかないという人も少なくありません。
では、いったいどうしたら「恋愛の直感」をうまく使えるようになるのでしょうか? それには「センサーを掘り起こす」「直感を信じる」「反応を考える」という3つのステップが必要になるのです。

まず最初のステップ、「センサーを掘り起こす」から考えてみましょう。私たちの目には見えませんが、ちょうどアンテナのように、私たちの心の中にも「最適な相手を感知するセンサー」が備わっています。ですからそのセンサーがうまく働いている状態ならば理由は分からなくても、自動的に(?)最適な相手を見つけることができるのです。
ただ、そのセンサーがいつでもあなたにとっていい方向に働くとは限りません。それどころか逆に、あなたにとって困った状況を引き起こすことすらあります。たとえばこんな例を考えてみてください。
あなたはそろそろ結婚したいなと考えているので、できれば結婚相手にふさわしいと"考える"相手を見つけたいと思っています。
ところがあなたのセンサーはなぜだかいつも「既婚の男性」や「どう見ても自分が不幸になりそうな相手」にばかり強い反応を示し、あなたを悲しい恋愛に引き込んだり、困らせたりするわけです。
それは、たとえていうならこんな状態なのかもしれません。最近、私は犬を飼い始めました。
まだ3ヶ月の子犬なのですが、どういうわけだか彼女は「知らない人」が大好きで、お散歩の途中でもだれかが通りかかるたびにものすごい勢いでシッポを振りながら、私を猛烈な力で引っ張ってその人の方に向かおうとするので困っています。
「知らない人」にかけよっていくとき、彼女は首が絞まって苦しいはずですし、私にもそのことで何度も叱られているので「やってはいけない」ということは分かっているはずです。しかし、それでもだれかを見るたびに走らずにはいられないのです。まさに「わかっちゃいるけど、やめられない」という状態です。
センサーがうまく働かないと感じるのはまさにこういう状態です。なぜだか分からないけれどすぐにだれかを好きになってしまう。好きになってしまえば自分が傷つくのは分かっているはずなのに…
しかし、私たちは幸いにも(?)子犬とは違います。
たとえティーンエージャーの頃はそうだったとしても、次第にそういう風にしていると自分が傷つくことを学習していきます。

その結果、どうなるでしょうか?
私たちは「心の子犬」を犬小屋に閉じこめるようになっていきます。外に出しておくといろいろ困った状況を引き起こすので、それを心の奥底にある小屋に閉じこめてしまい、その声を無視するのです。つまりだれかを「好きだ」という心の声を無視し、それに気づかないふりをして、自分に有利な状況でしかそれを表に出さないようにコントロールしはじめるのです。
そうすることで自分をうまくコントロールすることができ、"無駄な恋"や"不利な恋"に手を出さないですむようになります。
これを一般には「恋愛の駆け引き」などとも言いますが、実際この方法はある年齢層では非常にうまくいきます。特にティーンエージャーで周りがまだ心の子犬を全開にしている時は、心の子犬を抑え込んで「クールに」なることであなたは意図的に恋愛を有利に運ぶことができるでしょう。相手の心を操ることもできますし、そもそも見込みのない恋ならば口にして傷つくこともありません。
しかし、このような状態を長く続けるとどうでしょうか?
「心の子犬」は最初、声を限りに泣き叫び外に出してくれと訴えるでしょう。時にはうまく小屋から脱出してあなたを衝動的な恋にのめり込ませるかもしれません。だけど、「心の子犬」をずっと無視し続けたら…?
「心の子犬(=センサー)」はやがて泣き叫ぶのをやめおとなしくなります。そしてあなたの理性に従うようになるでしょう。あなたの理性が自分にとって都合のいい相手を恋愛の対象に選んでも、あなたの心のセンサーはそれに異論を唱えません。また胸がはじけそうになるほど好きな相手だとしても、理性が「もう別れるべきだ」と言えば、すがりついたり泣き叫んだりすることもなくなるのです。
確かに、それはある意味「楽」ではあります。しかし、デメリットとしてあなたは「恋のときめき」を感じることがなくなっていくでしょう。なぜならあなたのセンサーは、完全に理性によってコントロールされているので、そもそも何かを「感じる」ことがなくなってしまっているからです。
こうして長年の意図的なコントロールの結果、あなたの「心の子犬=センサー」は土中深く埋められ、何も感じなくなります。そのため恋の駆け引きは上手になりますし、自分に有利な相手を選ぶこともできるでしょう。しかしそれはつねに「理性的な恋愛」で「燃えるような恋愛」とはほど遠いと感じるかもしれません。

さて、ではもしあなたの心のセンサーが埋まってしまっているとしたら、いったいどうしたらいいのでしょうか?
その解決策は意外に簡単です。あなたの心の奥底に眠っているセンサーを「限定的に」解放してあげるのです。
具体的に言えば「何も求めない恋愛」をしてみるのもいいでしょう。結婚を意識し始めると「無駄な恋愛」を避けようとする人が多いものです。だからたとえちょっといいなと思っていても、ぐっと年下の相手や結婚の条件に合わない相手は、恋愛対象として最初から除外してしまう人も少なくありません。
確かに最初から結婚するとは考えにくい相手と恋愛をするのは、一見遠回りに見えるかもしれません。しかし、意外にこれは良い結果を生むことが多いのです。なぜならこうして「感じるままの恋愛」をすることで、あなたの心のセンサーは解放されていくからです。
心のセンサーは長い間働いていなかったので、もしかすると最初は反応が鈍いかもしれません。しかし次第にその感覚が戻ってきて「ときめく」「ときめかない」という反応を明確に感じられるようになってくるでしょう。その結果、たとえその恋が終わりを迎えたとしても、あなたのセンサーはもとの働きを保ったまま動き続けます。だから次に「すばらしい相手」を見つけたときには、それを激しくあなたに教えてくれることになり、結果的に早く理想の相手を見つけることができるようになるわけです。
また恋愛まで至らなくても、限定的にそれを解放するだけでも十分に効果があります。つまり実際に交際しなくても「心の中で密かに想う」だけでいいのです。友達の恋人、カッコイイ上司、駅で毎日すれ違う人…。実際に交際するのが難しかったり、傷つくことが分かっている相手でも心の中で密かに想って、今自分がどんな風に"感じているか"ということを意識してみます。そうすることでセンサーは本来の働きを取り戻し、あなたが今どう感じているかを教えてくれるようになっていくのです。
もちろん、ティーンエージャーの頃とは違いあなたの理性はしっかりとそのセンサーの手綱を握っているので、暴走してだれかを傷つける危険はありません。たとえ心の中ではどう思っているとしても、あなたはそれを外に出す必要はありませんし、コントロール不能になる前にいつでも自分でそれを打ち切ることができるのです。
だから安心してその"疑似恋愛"を楽しんでみましょう。
あくまでも大切なのは、あなたの心のセンサーがどういう動きをしているかを感じることなのです。

引き続いて、二つ目のステップ「直感を信じる」ことについて考えます。
直感を信じる…。これほど言葉にすると簡単で実践するのが難しいことも珍しいかもしれません。
最初にお話ししたとおり、直感はおおむね論理の何倍も早くあなたに大切なことを知らせます。
これは言い換えるなら「なんでかよく分からないけど"イイ!"と感じる」という意味でもあります。
理由が分からないのに信じなければいけない。
これはまるで「理由は分からないけど近いうちに東京で大地震があるから逃げろ」と言われて、それを信じなければいけないようなものです。
しかし、すこし練習すればあなたも簡単に正しい答えを直感から得てそれを信じることができるようになります。そのポイントをいくつかご説明しましょう。
まずは「直感に権威や自信を与えていく」と言うことです。
信じるためにはそれなりの"根拠"や"実績"が必要です。あなたがもし自分の直感を信じることができないとしたら、そもそも「ビビッ」とくるはずはありません。だからまず自分の直感が本当に正しいのだという自信をもつ必要があります。
これを確かめるもっとも簡単な方法は「直感に耳を澄ましてみる」ことです。あなたがこれから誰かに会うときに"直感的に"その人をどう感じているかを意識してみてください。
新しい人に出会うと時々「何となく好ましい」「何となくイヤだ」という小さな声があなたの心の中で響いているはずです。それを意識的に感じるようにすると、やがてその直感がかなりの場合「正しい」ことに気がつくでしょう。
もちろん、直感が常に正しいワケではありませんが回数を重ねていくと、少なくともあなたが何を根拠にその人を「好ましい」「好ましくない」と判断しているかが理解できるようになるでしょう。
人によっては相手の「気質的な部分(冷淡そう、楽しそう、陰気だ…)」というようなところに反応しているかもしれませんし、「身綺麗かどうか」「信頼できるかどうか」というような部分かもしれません。
こうして自分の直感を磨いていくことで、だんだん自分の直感に自信を持っていくことができるようになることでしょう。そうすればいつかあなたに最適な人が現れたときにも、"直感的に"それを理解でき、自信をもってその直感を信じて行動することができるようになるのです。
最後に大切なことは「理性に引っ張られすぎて、直感を殺さない」ことです。特に結婚を意識しすぎていると相手の「条件」に左右されることが多くなります。身長は、仕事は、年齢は、年収は…などなど。
もちろん、一生の事ですから条件に合う人を求めるのは当然としても、あまりにも条件を重視してしまうと「条件に合う人=理想的な人」と考えるようになり、直感を極端に無視することになってしまいます。
よく見かける例ですが、自分の求める条件にぴったりの人とつきあっている、でも"なぜか"結婚に踏み切ることができず、かといって別れる気にもならない…、という状態になっている人がいます。
これは多くの場合、直感と理性が敵対しているときに起こります。理性は条件を提示し、それに合致していることでハッピーになっています。しかし直感は無意識でその人が"好ましい相手ではない"と感じているので、結婚に同意できないのです。
もちろん、直感がよいといえば全てOKというワケではありませんが、あまり条件ばかりを頭で考えすぎていると、せっかく直感が何か大切なことをあなたに教えようとしていても無視され続け、やがて何も教えてくれなくなっていく可能性もあります。ですから直感と理性の意見をバランスよく取り入れていくことが、「運命的な出会い」を成功させる秘訣だといえるのです。

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