中国の変わりようについては、いまさら多くを説明するまでもありません。社会が変われば、人も変わるのが世の常。人々のライフスタイルや価値観は、大きく様変わりしました。ほんの10年前、中国人観光客が銀座でブランド品を買い漁る光景など、誰が想像し得たでしょうか。
しかし、どんなに社会が激変しても、中華民族のDNAにしっかりと刷り込まれた伝統・思想は些かも変わっていない――そう感じる場面も多々あります。その代表例が「家族との絆」です。中国でも核家族化が進んでいるとはいえ、故郷や肉親への想いは日本人以上に強い気がします。日本人の場合、「仕事が忙しい」「交通費が高い」といった理由で、盆や正月にさえ帰省しない人が少なくありませんが、中国人にその感覚は理解できないはず。チケットを入手するため長蛇の列に並び、身動きも取れないスシ詰めの列車に長時間揺られ、万難を排してでも「春節」(旧正月)に家族のもとへ向かうのは、「血」のなせる業としか言いようがありません。日本人にはピンとこないかも知れませんが、「春節」の民族大移動は想像を絶する凄まじさで、よほど望郷の念が強くなければ、とても我慢できるものではないのです。
福島の原発事故のあと、日本で生活する中国人の避難ラッシュがありました。被災地に住んでいたならともかく、遠い関西圏の人たちまでが続々と日本を離れる現象を目の当たりにし、「ちょっと過剰反応なのでは」という印象を禁じ得なかったのですが、「何が何でも帰って来い」――実は祖国で案じる家族からの
“帰国命令”が絶えなかったそうです。家族に懇願されると、すっかり里心がついてしまうのが中国人のいいところ。要するに過剰反応ではなく、「家族を心配させたくない」との思いが強かったのですね。
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