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■北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科助手パトリック・ラインメラ氏
■プロフィール
ボッコニ大学(ミラノ)、ケルン大学大学院1990年MBA。ミラノにおける戦略コンサルティング会社を経て、ケルン大学経営学部1995年Ph.D.取得。一橋大学商学部研究科・産業経営研究施設客員研究員後、北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科助手、現在に至る。University
Cattaneo CastellanzaにVisiting Professor。主な著書はProduct Semantics、Marketing Trends
in Japan,「マーケティング革新の時代-製品開発革新」有斐閣1999年(15章)。論文等はEuropean Management Journal,
Journal of Management and Governance、Journal of Design Theory,
情報系,デザインニュース、JIDPO,日経デザインに掲載。
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All things are ready,if our minds be so.
Henry V,
Shakespeare
■タイミングスキャンダル
スキャンダルのタイミング:危機管理の本質 ビジネスにスキャンダルは、つきものなのか。近頃、日本の大企業をめぐるスキャンダルが目に付く。事件は広く報道され、日本企業のイメージダウンを招いただけではなく、ファイナンシャル・タイムスでは「日本企業は責任を負おうとしない」という厳しい評価を下され、株価も30%―40%下落した。 これは、日本経営に限ったことなのか。決してそうではない。欧米のマネジメントでもスキャンダルは少なくなかった。かつてドイツの大手自動車メーカーは、自社の欠陥車によって顧客が事故死したにもかかわらず、リコールの対応が遅れ、米国市場から完全撤退せざるをえなくなった。昨年も、米国トップチップメーカーがごく小さなチップエラーではあったが、その対応に遅れ多大な損害を被った、などその例に事欠かない。
なぜか・・・ 人間は完璧ではないので、間違いは必ず起きる。組織には問題が頻繁に生じるが、しばしばその解決は後回しにされる。未解決の問題の上に組織が発展していくにつれて、その解決はますます難しくなる。沈黙が原則になり、時がたつにつれて、発覚する可能性が高くなる。
スキャンダルの連鎖 スキャンダルは世の中の注目を集める。米国大手スポーツ用品メーカーの東南アジアにおける製造現場の実態が暴露されスキャンダルになるやいなや、東南アジアの工場で製造している企業は、大変厳しくチェックされるようになった。 「引き込み」というように、スキャンダルはさらなるスキャンダルの引き金になる。一度スキャンダルが明らかになると、問題を取り巻く状況は一転する。告白するのが楽になり、他の企業が突然「我々もやってきました。そんなに長くないけれど」などと言い出す。
スキャンダル後 2000年9月17日のニューヨークタイムス誌によると、2年前に日本の大手自動車メーカーはセクハラのスキャンダルに巻き込まれた。それは、ある米国工場において白人男性による悪質なセクハラが長く続いたというものだった。問題発覚当初、トップマネジメントは距離をおき、黙認したという。しかし、その後スキャンダルを終わらせるためにトップは謝罪し、賠償金を払った。それにもかかわらず、2年たっても今も改善されず、悪化したという人もいるらしい。 スキャンダルを起こしたらそれを二度と起こさないようにするのが危機管理の最低条件だ。スキャンダル後にチェックするはずがないと思うのは甘い。
何をすべきか・・・ 最近、リスクマネジメントという言葉をよく耳にする。このような危機管理には、ほとんどの場合に2つの側面がある。事故を防止する、そして発生したスキャンダルを敏速にかつスムースに処理する。しかし従来の危機管理では、知識経済で必要とされるスピードに追いつくことができない。 したがって、何か問題が発生した場合、スキャンダルを自ら告発することが重要になる。
スキャンダルを内発的に起こす 組織の中で問題点を示すことは大変厳しく危険だ。表面上は組織全体が順調で、激しい競争相手である他社も完璧に見えるとき、自社の問題を明らかにするのは、絶対に不可能と思われる。和を破ることも極めて危険で困難だ。しかし、それにもかかわらず「何か臭いぞ」「やっぱり、これは許されない」などの発言が、社内でボトムアップされなければならない。オーストリアのシュンペーター教授の創造的破壊は自社をも含める。 スキャンダルは、組織内の悪しき慣習を打破するドラスティックなきっかけになりうる。そして、問題を組織の変革の機会として活かす者こそが、新経済の主役となる。
リスクマネジメントとはタイミング、スピードそして価値観 企業は、危機のリスクをマネージすることができる。メディアを通じて「我々はXという問題を発見した、A,B,Cという対策で被害者のために全力を尽くす」など問題にどう対処するかを具体的に素早く世に知らしめなければならない。 つまり、スキャンダルを最小限にくいとめるには、内発的であること、敏速にタイミングを逃さないことが求められる。したがって、自己反省・自己告発によって損失を少なくすることができるだろう。しかし経済性より重要なのは、グローバルに共通する価値観、真、善、美なのだ。
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