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鈴木敦子(すずき あつこ)
■プロフィール
横浜生まれ。東京大学教養学部教養学科卒、UCSD(カリフォルニア大学サンディエゴ校)国際関係学科修士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー社において、顧客企業の製品市場戦略、外資系企業の日本市場参入戦略策定などに従事。その後、人事コンサルティング会社、ワイアット株式会社において、顧客企業の人事諸制度の診断、設計、導入などを数多く手がける。現在、フリーでコンサルティング業務に従事。著書に「人事・労務がわかる事典」(日本実業出版社)「若者の力を引きだす人事サブシステムーインパクトプログラム」(共著、経営書院)などがある。


■エンパワメント(Empowerment、またはEmployee Empowerment)とコーチング(Coaching)


従来トップダウン文化が強かった米国で
@ 組織のフラット化や組織の人員削減の影響で個人の仕事の範囲が広くなった。いちいち上司の判断に頼るのでなく各自が判断できるようでなければ仕事が進まない
A 市場の変化が早くまた顧客満足度が重視されてきた。顧客と接する末端従業員がその場で判断できなければ競争に追いつけない
という環境変化が起き、ボトムアップの重要性が認識されるようになってきた。そこで注目されるようになったのが「エンパワメント」と「コーチング」である。
「エンパワメント」とは「組織中の下の階層により大きな権限(パワー)を与え、自分の判断で仕事ができるようにすること」という意味。単に権限を委譲する行為だけでなく「独自の判断で仕事ができるという意味。単に権限を委譲する行為だけでなく「独自の判断で仕事ができる環境を整えるためのすべての行為」をさすことに注意が必要だ。
つまり@組織の目的、ビジョンの(部下などとの)共有化A各自の判断で仕事が進められるような仕事の再設計・仕事の範囲・権限の明確化B意思決定に必要な能力のトレーニングC必要な情報を得られる環境設定D適切な意思決定に対して評価される仕組E上司および部下のエンパワメントに対する日々の努力、などの行為まで含む総合的な視野で社員にパワーを与えようという活動である。
「コーチング」とは「スポーツ等のコーチをすること」という意味で用いられるが最近は「個人が仕事等において自分の目標を設定し達成するのをサポートすることおよびそのスキル」という意味で使われえる。
社員へエンパワメントを行うためには社員が自分でイニシアチブをとり、目標をたてて遂行する意志と能力が必要だ。
コーチングはエンパワメントを実現するためになくてはならないスキルとなっている。
この「コーチング」には次のような特徴がある@コーチが一方的に指示、指導する方法ではなく「自分で考えさせ気づかせる」というアプローチをとること。誰でも目標を設定し方法を考え出し実行する(潜在)能力がある、ということを前提としている。
A課題や解決策を自分で気づかせるために、興味をもって話を聴く、適切な質問を行い現状認識を助ける、など様々なコミュニケーションスキルを用いること、等である。
ボトムアップ文化のある日本では米国とは状況が異なるが、自律的に仕事をするための環境を総合的な改善しようという「エンパワメント」の考え方は役にたつ。またコミュニケーション下手の日本人・日本の組織にとってコーチングスキルの向上は絶対不可欠なものだろう。




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