■「測る」と「狙う」
あなたが投資家だとしよう。何に注目して企業を評価しますか。いろいろな観点がある。成長性に目が向くかもしれないし、IT関連、ネット関連といったような事業領域が気になるかもしれない。市場シェアに注目する人もいるだろう。独自の技術をもっているかも大切だろう。ブランド・エクイティーはどうなのか、といったおしゃれなことをいう人もいる。
業績に関わるさまざまな指標をはじき出すかもしれない。ROA、ROS、ROE、GPM、EPS、PERというあたりから始まって、はやりものではNCFとかNPV、はたまたSVAというのもある(ところで全部わかりますか。なぜかこういうのは3文字が多い。NBAとかCNNとかIOCというのもそのうちにきっと出てくる)。Tobin's
qとかJensen's
Alphaというようなマニアックなものを持ち出す人もいるかもしれない(知らなくてもいい。僕も完全には理解してない)。そしてもちろん株価はとっても気になるはずだ。
それでは、あなたが経営者だったら何を追求しますか。企業が追求すべき成果目標とはなんだろう。これはとっても大切な問題だ。どんなにマネジメントや戦略がよくても、向かうべきところが間違っていたら意味がないからだ。
それはひとつしかない。「長期的に維持可能な利益」、これだけである。利益を考えなければ、成長なんてひどく簡単だ話だ。「いま契約してくれた人にもれなく100万円差し上げます」という広告を世界中の新聞にでかでかと出せば、誰でも明日にでも世界No.1のインターネット・プロバイダーになれる。どんどん成長していても、ネットビジネスで世の中の注目が集まっていても、ユニークな技術があっても、どんなにシェアや今の株価が高くても、利益を持続的に出せない企業は偽物である。いずれ失速してしまう。成長やシェアや技術や規模は、それが長期的な利益とつながる場合に限って意味がある。顧客満足や顧客価値も、突き詰めればかならず利益に反映される。利益を生まない顧客満足なんて嘘だ。利益の裏づけのない株価は多摩川の花火大会のようなものだ(別に隅田川でもいいが)。利益を持続的に生みつづけるというのは、もっとも難しく、もっとも大切で、ステイクホルダーにとって最も価値がある経営成果である。
ITだネットだEコマースだベンチャーだと世の中が騒がしい。株価は猫の目のようにくるくる変わる。新聞紙上の企業評価にしても、3ヶ月もたつと前と180度違うことを平気な顔で言っている。華やかなドット・コム企業だってほとんどが赤字(しかも大赤字)である。「長期的に維持可能な利益」を追求し、達成するのがホンモノの企業である。こういう時代だからこそ、「経営の質」に目を向けてほしい。
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