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■北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科助手パトリック・ラインメラ氏
■プロフィール
ボッコニ大学(ミラノ)、ケルン大学大学院1990年MBA。ミラノにおける戦略コンサルティング会社を経て、ケルン大学経営学部1995年Ph.D.取得。一橋大学商学部研究科・産業経営研究施設客員研究員後、北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科助手、現在に至る。University Cattaneo CastellanzaにVisiting Professor。主な著書はProduct Semantics、Marketing Trends in Japan,「マーケティング革新の時代-製品開発革新」有斐閣1999年(15章)。論文等はEuropean Management Journal, Journal of Management and Governance、Journal of Design Theory, 情報系,デザインニュース、JIDPO,日経デザインに掲載。

All things are ready,if our minds be so.
Henry V, Shakespeare

■リアルタイムe-コマースの到来

今日の新経済と知識社会は企業の成功要因を根本的に変え、時間がその中心的な課題となっている。時間は経営において貴重な素材となり、ビジネスの成功はリアルタイムとタイミング戦略にかかっている。なぜ時間の使い方が、現代のビジネスにおいて決め手になるのか。それにはいくつかの理由があるが、以下の主な3つに触れてみたい。

1) Now or nothing!
最近の顧客は特定のものを必要とするというよりは、むしろ「何か」を欲する。しかも欲しいと思った時に、即それが得られるという条件が満たされる時にのみ商品を購入したいという顧客が増えてきている。今なければ買わない。今あるなら買う。日本のコンビニにおける商品の売り切れ防止対策、そしてコンビニの驚異的な普及自体がそれを証明しているといえるだろう。

2) 技術は促進要因: いつもすべて!
情報技術の発達により、世界中の人々の生活が変貌してきた。携帯電話の発達によりインターネットへの接続はもはや有線と無線との差はなくなりつつある。バーチュアルなデータセンターに保存される連絡先リスト、資料、カレンダーなどはどこからでもアクセス可能であり、WAP携帯電話などを使用することによって移動しながら、インターネット上の仮想店舗を訪問できる。
さらにインターネット上の販売が持つ大きな特徴の一つに、選択の幅が極めて広いということがある。たとえばAmazon.com,Ebay.com,priceline.comといった企業は、インターネットが普及する以前では考えられないほどの豊富な情報とサービスを、使いやすく提供している。これは膨大な倉庫や店舗が実際には存在しないのにもかかわらず、それらを仮想して設置することが出来るという、デジタルデータの強みを生かしたビジネスである。

3) インターネット時間はリアルタイムではない
仮想店舗には物理的な品物が存在しないので、注文しても待たなければならないという弱点がある。例えば、本をインターネットで注文すると手元に届くまで2,3日から6週間かかり、リアルタイムにはほど遠い。一方、欲しい本を大きな書店で探し回るのということは、骨の折れる作業であり、なおかつ結局見つからないことも多い。

リアルタイムをマネージメントするというチャレンジ
リアルタイムという概念が導き出すビジネス上のメリットは、顧客の選択肢の広さと、商品・サービスの敏速な提供である。コンビニが急成長したのは、現在のビジネスにおいて、このような同時性が極めて重要な要素になるからだ。
リアルタイムビジネスを実現するために、世界一の規模を誇る書店、B&Nは、店内に自社のイントラネットで本を検索できる装置を導入して、今すぐに欲しいものがどこにあるかを知りたいという、顧客の願望をかなえている。これも時間戦略の一つであるといえよう。
最近Amazon.com, Blockbuster等は宅配会社に直接投資し、提携によって宅配サービスの構築に力を入れている。たとえば米国のKozmo.com は、オンライン注文後一時間以内に商品を届けることができる。
ここで注目すべきことは、これらのリアルタイムのパイオニアが宅配等を自社では行わないことだ。地域に密着したサービスを新たに作ることは可能なのだが、e−コマースにおける時間のコストが高すぎて現実的ではない。よりよいタイミングのために提携や投資戦略によって前進する方が安くかつ速い。 
たとえば、ノキアは 独占的な技術力よりもアライアンス(提携)によって成功してきた。現地の知識をローカルパートナーによって戦略的に発揮していったのだが、それは重要な決断が社外のパートナーによって決められることを意味する。そして外部のスピードに内部がついて行く必要があるのだ。

過去をもとに未来を切り開く
日本の企業のリアルタイムにおけるe−コマースへのスターティングポシションは決して悪くない。昔からある出前はベストプラクティスと言える。またJust-in-timeの制度は日本で成熟したので、日本の企業がリアルタイムモードに転換するのは可能だ。しかし、良い条件が揃っているだけでは何も達成できない。リアルタイムのe−コマースを実現するためには、インターネット時代におけるグローバル展開への心構えと時間戦略が不可欠である。


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