◆プライバシーは法律で保護されている

 個人的な生活に関することは、他人からのぞかれたり干渉されたくないものです。法律も、個人の私生活上の事柄をむやみにのぞかれたり公開されたりしない権利=プライバシー権として、これを保護しています。プライバシーとして保護されるのは私生活上の事実ですが、虚実が入り交じっていたとしてもそれが事実らしく受け取られる場合は、保護の対象になり、侵害されれば、損害賠償(慰謝料)の請求ができます。

 例えば、ある雑誌に、あなたの借りた本やビデオのタイトル、あなたの抱えている家族問題や借金の額などの私生活や個人情報が記事になって書かれたとします。あなたの実名が出ていればもちろん、たとえ仮名であったとしても周囲の状況などからあなたのことであることが簡単にわかる場合なら、プライバシーの侵害となります。

 一方、実際に人が世間から受けている社会的評価を名誉といいます。いわれのない誹謗中傷によって名誉が損われると名誉毀損になりますが、プライバシーに関する事柄の暴露により名誉毀損した場合には、プライバシー侵害と名誉毀損の両方が当てはまることになります。ただし、「公表された事実が真実、もしくは真実であると思われるような事情があり、公共の利害に関して公益を図る目的でなされた行為」であれば、名誉毀損とはなりません(たとえば政治家の汚職疑惑報道など)。

 このように、名誉毀損とプライバシー侵害とは、非常に近い関係にありながら、その内容と意味する事柄は少々異なっています。わかりやすくいえば、名誉は回復可能ですが、プライバシーは回復不能だということです。たとえば名誉毀損の場合、損害賠償のほかに謝罪広告などの方法によって(名誉の)原状回復が可能ですが、プライバシー侵害ではいったんその内容が公開されてしまうと、公開以前の状態には戻しようがありません。





弊社刊「図解でわかる100シリーズ」より

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