実用新案権の効力と侵害

 実用新案権は特許に較べると物に関わる小発明という制限はあるものの、実用新案権が「登録実用新案を業として実施する排他的独占権である」ということにおいて、その効力は特許発明の特許権となんら変わるところはありません(ただし、権利の出願からの存続期間は、特許の20 年に対し6 年です)。また、1993 年の実用新案法改正以降、実体審査を要しない早期登録制度が導入され、無審査主義へ移行したため、方式審査および基礎的要件の審査のみで実用新案権の設定登録がなされ権利が発生することになりました。
無審査になったかわりに、もし、登録後に新規性や進歩性が欠けるなどの問題が判明すると、登録そのものが無効になります。
なぜこうなったかというと、考案はライフサイクルが短いため、出願者は素早く実施したいこと、そしてそのスピードに見合った保護の必要があることからです。実用新案権も、特許権同様、正当な権利なしに第三者が実用新案を実施した場合に、権利の侵害にあたります。権利者は侵害者に対して侵害行為の差し止めを請求することができるほか、侵害によって生じた損害があれば、その賠償を請求することができます。
不当利益返還請求権、謝罪広告など信用回復措置の請求も行えます。刑事罰は、3 年以下の懲役または300 万円以下の罰金と、特許権と比較してやや軽い量刑になっています。特許に較べると、審査登録が簡単で迅速ですが、権利期間が短く、侵害に対する量刑が軽いなど、権利がやや軽いといえるでしょう。
また、実用新案権の場合、無審査であることから生じる無用な紛争を防止するために、「実用新案技術評価制度」という特許庁が一応の判断を示す制度があります。権利者が、侵害者に対して対抗措置をとる場合、まず、この「実用新案技術評価書」を示して警告しなければなりません。その後、はじめて差し止め請求などが行えることになっています。


弊社刊「図解でわかる100シリーズ」より

株式会社アイ・イーシー 東京都千代田区飯田橋4-4-15
All Rights Reserved by IEC
本サイトのコンテンツの無断転載を禁止します