13億人はヒトそれぞれなれど、興味が尽きない中国人。もっとよく理解するための連載講座
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第4回 すごいぞ中国人! ツワモノ編
震災後、日本人の「忍耐力」「協調性」「謙譲の精神」などが海外を驚かせ、称賛の声が続々と寄せられました。特に被災地の人々の理性的な態度には、敬服の一言しかありません。肉親や家財一切を失いながら、パニック状態になった人は、ほとんどいなかったように思います。
このように、世界が目をみはった日本人の美徳。なかでも、いちばんカルチャーショックを受けたのは中国人でした。ネット上には「日本人を見直した」「日本人の完璧なモラルは、中国には存在しないものだ」「日本人を見習うべき」といった書き込みが数多く寄せられていました。
「忍耐力」「協調性」「謙譲の精神」についていえば、正直、日本人と比べ、中国人はこれらの要素が劣るとの印象は否めません。それは、列に並ばない、列に割り込む、集合時間を守らない――こうした行為をみれば納得でしょう。
では、逆に日本人に足りない中国人の優れた点を挙げるならば、僕は「行動力」や「自己主張」だと思うのです。あれこれ考える前に、まずは行動してみる。どんな場面でも、相手が誰であっても、自分の考えははっきりと主張する。この2点は、明らかに日本人に欠如した部分です。つい最近、広州から貴陽へ移動する寝台列車の車中で、中国人のたくましい「自己主張」を象徴する場面に遭遇しました。これから紹介するエピソードの登場人物は、ある意味、かなりの「ツワモノ」。日本では絶対に起こり得ないであろう深夜の騒動とは――。
12時を回ったころ、ようやく眠りについた僕は、となりのベッドの乗客が車掌に何やら抗議する声で安眠を妨げられました。途中駅から乗車した初老の夫婦が「毛布がない。どういうことだ。すぐに用意しろ」と要求するのに対し、車掌は「今夜は満員で予備はない。発車時には間違いなくセットされていた」と反論。しばらく押し問答が続いていたのですが、ついに車掌が折れ、消えた2枚の毛布を捜索することになりました。ほとんどの乗客が寝息を立てるなか、車掌はひとつひとつベッドを点検していき、ついに姉妹らしき2人が、毛布を2枚重ねて使っているのを発見しました。車掌が2人を叩き起こし、詰問すると、「私たちは風邪をひいて体調が悪い。車内の暖房が低すぎるので、やむを得ず空きベッドの毛布を拝借した」と悪びれた様子もなく答え、なんと近くにいた野次馬の僕に「返しておいて」と毛布を放り投げるではありませんか。この不遜な態度にはさすがに腹が立ち、「非常識にも程がある。自ら謝罪するのが筋だ」と声を荒げ、毛布を投げ返しました。気弱な日本人とはいえ、ここは「自己主張」しないわけにはいきません。「いい加減にしろ!」車掌の一喝も右から左、姉妹は無視して背を向けてしまったので、結局、僕が夫婦のベッドに毛布を持っていくことに。所詮、日本人は日本人でした…。
しかし、騒動はこれで一件落着ではありません。ぐしゃぐしゃになった毛布を見て、夫婦は「高い料金を払っているのだから、きれいな毛布と交換しろ」と車掌に詰めよります。これは正当な言い分なのですが、車掌は「予備はない。毛布を回収したのだから、これ以上はわれわれの責任ではない」と主張。慇懃な日本の車掌とは違い、中国の車掌は、警官同様、威張りくさっているのです。「乱七八糟(めちゃくちゃな話だ)」と悪態をつきながらも、最後は夫婦が妥協し、どうにか車内に平穏が戻ったのでした。ちなみに、より激高していたのは夫人のほう。図々しい姉妹ともども、「ツワモノ」は女性に多いようです。
この騒動、車掌、夫婦、姉妹、それぞれが主張すべきことを主張していました(姉妹だけは無茶苦茶ですが)。日本では「自己主張」するタイプを「我が強い人間」と煙たがる傾向がありますが、海外では日本人の曖昧な愛想笑いや事なかれ主義が誤解を生むことも少なくありません。僕自身、「自己主張」が苦手なタイプなので、他人の目を気にせず、堂々とモノを言える中国人のハートの強さを羨ましく感じます。
では、中国人が「自己主張」に長けているのはなぜでしょうか。それは、13億もの人間がひしめく厳しい競争社会で揉まれているからです。「弱肉強食」という意味では、日本など中国の比ではありません。そうした背景を理解したうえで中国人と向き合えば、「ツワモノ」の鎧をまとった彼らの違った一面も見えてくるはずです。
いつも人であふれている駅の待合室。駅や列車はトラブルが起こりやすい場所で、このあと席取りをめぐるケンカが起きた。
そんな「ツワモノ」揃いの中国人ですが、意外だったのは、仕事を辞してまで帰国する人が相次ぐなど、原発事故に過剰とも思える反応を示していること。彼らにすれば、日本は小さい国だから不安なのでしょうが、「政府が発表する数字はウソばかり」との意識が染みついているのかも知れません。
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